ツイードのジャケットに袖を通し、
抱えた花束の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、
あなたの舞台へ向かう――
そんなささやかな約束を、私はまだ果たしていません。
一度も劇場には足を運んでいないのです。
けれど、それは果たされなかった約束ではなく、
まだ「その時」が訪れていないだけ。
心のなかに描くのです。
舞台の光と影、あなたの動き、
そして幕が下りるその一瞬の、静かな一礼。
その背中に射し込むスポットライトの光を。
私は信じています。
あなたが生きてきたすべてが、
舞台という場に昇華される瞬間が来ることを。
それが、観る者の魂を震わせ、
あなた自身もまた、生きる意味を確かめるような――
そんな、永遠に刻まれる光の時間となることを。
その日のために、私は今日も静かに祈ります。
まだ訪れていない朝の光を待ちながら、
花束を心の奥に抱きしめるように。
そしてその日が来たとき、
私はきっと微笑みながらこう言うでしょう。
「やっと来られたよ」と。
それは過去に置き去りにされた約束ではなく、
未来へと向けて、そっと灯された希望の灯。
あなたの人生が、いままさに舞台の上で輝きはじめる、
その“初日”を、私は心から信じているのです。