― 審神者・吉祥礼の筆より
なぜ、あの人を忘れられないのか
別れてもなお、心の奥に残り続ける想い――。
相手の声、しぐさ、言葉の断片さえ、胸を締めつけるように蘇る。
時間が経っても、気持ちの整理がつかない自分に
「これはまだ愛している証なのか」と問いかける人は少なくありません。
しかし、それは本当に「愛」なのでしょうか。
それとも――「執着」なのでしょうか。
この問いは、誰しもが一度は立ち止まる魂の岐路です。
審神者として、今ここで静かに語らせていただきましょう。
執着とは何か。そして、なぜ私たちはそこから自由になることが、
魂の成長にとって不可欠なのかを。
執着の正体は、叶わなかった理想の補完
多くの人は、別れの痛みを「未練」と呼び、
それを「愛の証」として抱きしめ続けます。
けれど、よく見つめてみてください。
その想いの中心には、「相手を思う心」よりも、
「自分の理想が崩れたことへの怒り」や
「どうしてこうならなかったのか」という葛藤が、
深く根を張っていないでしょうか。
執着とは、過去にすがることで今を失うことです。
それは「愛されなかった自分」を否定し、「認めてもらいたかった自分」を
なんとか正当化しようとする、魂の内なる闘争でもあります。
忘れようとするたびに苦しみ、
思い出すたびに胸が痛むのは、
その関係のなかで叶わなかった“理想の物語”を
いまだに心が完成させようとしているからです。
「もっと優しくしてくれたなら」
「なぜ、あの時、あんな言い方をしたのか」
「最後にもう一度だけ、会えたら」――
そうした“もしも”の想いは、執着の炎に薪をくべることに他なりません。
けれども、本当に大切なのは、
相手を手放すことではなく、理想を手放すことなのです。
魂の視点 ― 縁は学びの場であり、別れは旅の扉
私たちは、それぞれの縁のなかで成長し、
魂の課題と向き合うために、特定の人と出会います。
その出会いが喜びであれ、痛みであれ、
それは必ず、あなたの魂に何かを気づかせるために用意されたものです。
別れた相手との関係に執着してしまうとき、
こう自らに問い直してみてください。
「この縁は、私に何を教えたのか」
「私のどんな癖や執着、弱さに気づかせてくれたのか」
そしてその問いに誠実に答えられたとき、
あなたはその関係の“学び”をすでに終えているのです。
学びを終えた縁は、
魂が次なる段階へと進むための扉になります。
泣きながらその扉の前に佇み続けることもできます。
けれども、ほんとうの成長とは、
深く手を合わせ、「ありがとう」「さようなら」と祈り、
その扉を静かに、自分の手で開くことなのです。
別れとは、終わりではありません。
それは、魂の成熟が始まる“はじまり”なのです。
自分の魂を愛することが、出会いの源泉
最後に、審神者として一言、あなたに伝えたいことがあります。
あなたが本当に欲しているのは、
「その人」ではないのかもしれません。
そうではなく、その人を通じて得られる“安心感”や“自己肯定”こそが、
あなたの本当の願いだったのではないでしょうか。
つまり――
あなたが求めているのは「愛される自分」です。
ならばまず、「自分が自分を愛する」ことを始めてください。
自分の弱さも、未熟さも、執着も、
すべてを受け入れて、抱きしめること。
それができたとき、あなたの魂はひとつ階段を上がり、
新たな縁、新たな出会いが、自然とあなたのもとへ訪れるようになります。
人は、自分を赦し、慈しめる人のところにしか、
ほんとうの意味での“愛”はやってこないのです。
だからこそ、どうか焦らずに、
あなた自身の魂に深く語りかけてあげてください。
そして今度こそ、誰かに愛される前に、
あなた自身が、あなたを一番大切にできるように――。
