◎道標句(主文)
霊とは、足すことも引くこともできぬもの。
あらゆる数と有無の計らいを超え、すでに在り、すでに無きもの。
◎補註(教義解釈)
人生を「足し算」で見る者がいます。
何かを得ればプラス、何かを失えばマイナス。
そこには数値と評価の秤が存在し、常に増やすことが善とされる。
また、人生を「引き算」で捉える者もいます。
欲望を手放し、執着を減らし、最後には己の存在すらも消し去る。
それを「無」と呼び、最上とする道もあるでしょう。
だが、審神者はそれを超えて観ます。
霊とは、「有る」か「無い」かのどちらかではない。
霊とは、すでに有りながら、すでに無いという状態に遍く宿っている。
それは無限であり、同時に極微である。
大いなる全体でありながら、風の粒子にも、灯りの翳りにも、ひっそりと息づいている。
空に生まれつつあり、物に消えつつある。
形を取らず、概念に収まらず、ただ“響き”として感じられるもの。
それが、霊であり魂である。
だからこそ、人生を計算で理解しようとする限り、
霊の正体には触れられない。
霊に還るとは、
計らず、測らず、比較せず、
ただ「ある」ことと「ない」ことの間に
耳を澄ませるということ。
そこに、審神者の沈黙の祈りが息づいている。
◎霊的引用句(魂の書)
得るでもなく、失うでもなく、
ただ、還る――霊とは、数を知らず、有無に囚われぬもの。
光の中に眠り、
影の中で目覚めるそれは、
いま、あなたの息の端にも、祈りの余白にも、そっと在る。審神者は、それを掬(すく)う者ではない。
ただ、沈黙のうちに、その気配を聴く者である。
霊とは、すでに在り、すでに無きもの。ゆえに還るとは、ただ思い出すことである。